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そのパンを焼いているのはダレ?(1)

12/21/2022

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昨年の12月に、夫がパンを焼きたいと言い、オーブンを買った。

実は以前から焼きたかったが、台所が狭くて使用できるワット数にも制限があるため、我慢していたそうだが、さすがに10年目にして限界に来たのだった。
 
シアトルに住んでいた時、夫はコーンブレッドやフランスパンを焼いたこともあったが、たまのことだったので、まさかそんなにベーキングが好きだとは私は夢にも思わなかった。
 
うちには既にオーブンレンジはあり、食品を温めるためだけに使っていたが、マニュアルを見るとベーキングもできることが書いてある。実際、数年前にアメリカから訪れた夫の叔母がパイを焼きたいと言い、そのオーブレンジを使ってみたが、焼き色がつかなかった。
 
そのことも、きちんとしたオーブンを買いたいという気持ちを駆り立てる要因になっていた。
 
とはいえ、日本のオーブン事情など、私たちには皆目見当もつかない。アメリカでは、賃貸であってもよほど小さなアパートでない限り、オーブンはキッチンに必ずフルサイズのものが備わっている。
 
日本の通常のオーブンの4倍くらい、またはそれ以上あるが、機能は至ってシンプルだ。それしか知らない私たちには、日本でコンパクトにまとめられた多機能のオーブンを買うのは、ちょっとした冒険であった。
 
クリスマス前、ケーズデンキのオーブンセクションに行ってみると、値段も機能もさまざまなものが並んでいて、私たちだけでは混乱してしまい、決められそうになかった。
 
ところが、すぐそばに女性店員が立っており、私たちに「オーブンをお探しですか?」と声をかけてきた。
 
「はい」
 
「オーブンで何を作りたいのですか?」
 
「パンを焼きたいんです」
 
ストレートな質問に、ストレートに答えた。声をかけられたタイミングといい、商品の説明といい、これはもう、宇宙がサポートしてくれているとしか言いようのない流れだった。
 
いとも簡単に決まった。天井がカーブしており、通常のタイプにはない350度までOKという「石窯ドーム」を売りにしたものは高価ではあったが、パン焼きには最も適しているということで、買って家に持ち帰った。
 
それから約1年。その間、夫は実に30回以上パンを焼いた。
 
自分が持っていた過去のレシピから始まり、最近では youtube でいいなと思ったものを試している。
 
ベーキング用品も徐々に揃い、回を重ねるうちに腕も上がってきた。寝る前に仕込んで、早朝に焼く日も増えた。そんなある日、楽しそうにパン作りをする夫の姿を見ていると、ふと、過去に見た映像が浮かんできた。
 
もう十数年前にもなるが、ある日私は夢を見た。というか、「見せられた」という方がしっくりくる。
 
寝ていたら、突然スイッチが切り替わるようにモードが変わり、目の前に映像が現れた。
 
それは通常のごちゃごちゃした内容の夢とは違う類いのもので、今でもクリアーかつ正確に思い出せるほど強烈な印象を与えるものだった。というのも、単一の静止映像で、場面が変わらないものだったからだ。
 
一人の女性が椅子に座っていた。写真館で撮るときのように、背景はブルーグレーである。それ以外には何もない。まるでポートレイト写真のようだ。
 
白髪に近いグレーの髪を、トップにボリュームを持たせて後ろで束ねた、70代くらいのぽっちゃりとした女性。灰色のドレスを着ており、それは今の時代ではないことが伝わってくる。
 
それを見るなり、「あっ〇〇(夫の名前)!」という声がした。それは外から入ってきたのか私の内側から出たのかはっきりしないが、確かに自分の声だった。
 
寝ている私はその声を聞いて、「もちろんそう、疑う余地もなくその通り」と納得しているから不思議である。
 
少し遠めなので詳細は見えないが、服装から18という数字が浮かび上がり、18世紀なのか1800年代なのか。アイルランドかスコットランドの人っぽく、なぜだかわからないがイングランドではないと強く感じた。
 
私にはアイルランドもスコットランドも馴染みがなく、特に知りたいとも思わなかったので、それっぽいというだけで十分だった。
 
ただ「名前は?」と思った瞬間、「だ・ば・あ」という音と共に、綴りが頭の中に入ってきた。
 
D・U ・B・B・E・R
 
ダバーという苗字の女性が、ロッキングチェアーのような(?)椅子に座り、こちらを向いている。刺繍なのか縫い物なのか、何かの手仕事をしており、手を止めて顔を上げた時の姿を私は見せてもらった格好になった。
 
料理をするのが好きで、家事の大ベテラン。いつも何やら手を動かしていて、作ることが好きだというのが伝わってきた。
 
その映像が消え、目が覚めてから思った。
 
「Dubberって初めて聞く名前と綴りだけど、そんな名前存在するのだろうか?しかもアイルランドかスコットランドで・・・」そんな名前を思いつくこと自体不可能なので、私が勝手に作り出したとは考えにくい。
 
インターネットで検索してみると、その名前は存在する。その時はそれで十分だった。
 
ミセス・ダバーは今の夫とは性が違い、ヨーロッパで時代も古く、年齢もかなり差があった。私は十数年前に突然夢で見せられて、その時はなぜそんなものを見たのか意味不明で、夫にどう関係しているのかなど全くわからなかったし、ほぼ忘れていた。
 
ところが、夫のパン焼きへの意欲が強まるにつれ、私の中で彼女が再び蘇ってきたのだった。
 
そして、そこから芋づる式に過去の出来事が次々と浮かんできた。
 
夫は昔から店で服を買うことには興味がなく、入ろうものならソワソワしてすぐに出たがり、イライラして怒ることもあった。よほど店での買い物が嫌いなのかと思ったが、キッチン用品や古い家具・調度品に限っては見るのが好きで、やたらと店を覗きたがる。
 
入ると興奮して楽しそうに色々見始め、長時間いても平気で、私は不思議に思った。キッチン用品をあれこれ見て楽しそうにしている夫の姿は、なんだか作るところを想像しながら楽しんでいるオバさんみたいだなと思ったものだった。
 
サンディエゴで結婚したとき、夫はシングル時代からのキッチン用品が既に多数あったので、私は新しく買う必要はなかった。その時も、こんな小物まで持っていて、オバさんみたいだなと思ったのだった。
 
その後シアトルに移ってからは、夏にベリー狩りに行き、ジャム作りにのめり込んだ。夫は瓶の選び方、煮沸消毒、真空の仕方などきちんとした行程を全て知っていて、私は驚いた。
 
ブルーベリー、ブラックベリー、マリオンベリーなど、ベリー狩りに行くと、面白くてバケツ2杯、重さにして10キロほど採ってしまう。真夏の夜中近くまでジャム作りの作業をするのだが、ジャムを煮詰める火と蒸気で高温になったキッチンで、エプロンをして汗だくになりながらも、楽しそうに手際よく20本ほど仕上げていく夫の姿は、私の目にはオバさんにしか写らなかった。
 
「オバさん、オバさん」と何度も言っているが、キッチンで何かを作っている夫から醸し出されるエネルギーは、私の頭には、家事に長けた有能な中年女性を思わせるのであった。
 
夫に、子供の頃母親がそのように色々作ったのかと尋ねたら、そうでもないようで、「どうしてそんなに好きなの?」と聞くと、「自分でもわからないけれど好きなんだよねえ」と言った。
 
これらのことを次々と思い出し、私にはどうもミセス・ダバーの特徴が出てきているように思えて仕方なかったので、冗談っぽく夫に夢の話をした。
 
「何バカなこと言ってるの?」とか、「ま〜た、変なことを言い始めた」、「ナンセンス!」とか言いそうなものだが、夫はじっと黙って聞いていた。無視するわけでもなく、聞き流しているという風でもなく、何も言わないが、否定はしていない様子だった。
 
これは意外な反応だった。
 
ある日、夫は作ることが楽しくて仕方ないと言った。新しいレシピに挑戦したいと次々と焼くので、冷蔵庫の中がパンでいっぱいになる。私は、夫の中でクリエイティブなエネルギーが急激に高まって、溢れ出しているのを感じずにはいられなかった。これは、圧倒的なデスクワーク型・思考タイプの夫から、今まで感じたことのない新しいエネルギーだった。
 
秋頃になると、夫はパンの仕込みが終わった後に、突然、勢いよく両手を前に突き出し、掌を上に向けて激しく揺らしながら「これはすごいことなんだ。なんて素晴らしい!この手から生み出されるんだ〜、この手から〜!!」と、頬を紅潮させ興奮した様子で叫んだ。
 
そんな風にジェスチャーで表現するなんて、それまで見たことがなかったので、一瞬驚いたが、それほどこの新しい創造エネルギーが溢れてきていたのだった。
 
手から生み出される。それは、私自身がタッチドローイングを通して感じることでもあり、自分の手から何かが創り出されるとき、喜びが溢れる。人間の手は創造するために与えられていると、私は強く思う。
 
その「創造する手」に感動している夫の中で、ミセス・ダバーが微笑んでいるように感じられた。私の勝手な想像かもしれないが、そう思えてならないのだ。
 
パンを焼いているところで夫にミセス・ダバーの名前を出すと、ニヤニヤするようになった。
 
最近は、夢中になっている夫の後ろから
「ミセス・ダバー全開になってない?」
と冗談ぽく声をかけると、夫はこちらを向いてニコッと笑う。
 
一度も否定しないし、それどころかそう言われて嬉しそうで、夫の中からフワッと何かが出てくるような感じさえ受け取った。
 
そんな時、ふと、ミセス・ダバーをタッチドローイングで描いてみようと思いついた。

<続きはこちら>

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    * このブログについて

    私の体験談やエピソード、日々の中で感じたことなどを画像を交え、多次元的な感覚で縦横無尽に語ります。

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    米国居住歴22年。タッチドローイングを通して意識の変容を促し、感性や可能性、創造力を引き出すサポートに注力。

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